if-then テクニック

「ショパンの幻想即興曲を弾けるようになるには、どうすれば良いですか?」 と聞く人はいないのに、 「英語を話せるようになるには、どうすれば良いですか?」 と聞く人は大勢います。

幻想即興曲を何百回と弾いて、その鍛錬の結果、演奏できるようになります。カラオケに例えるなら、歌いたい 曲があれば、その曲を何度も練習して人前でも自信を持って歌えるようになっていきますよね。

英語を「話せる」ようになるには、英語を「話す」練習をたくさんするしかありません。 では、なぜ英語を話すこととなると、突如上のような質問が飛び出してくるのでしょうか。

私の推測ですが、楽曲の場合、始まりと終わりが明確で、特に出口が見えているため「ひたすら繰り返す」という行為の苦痛が軽減されるのだと思います。加えて、見本となる曲や歌手の歌い方がそこにあるので、自分の目指す姿がよりクリアに描ける(イメージできる)ことで、可能にしているのだと思います。

一方、英会話というのは、二つとして同じものが存在しない。入口も出口も見えない。。。会話のトピックは昨日の晩御飯から、明日の職場でのクレーム処理やら、子どもの進学についてまで幅広く。時制はというと過去形もあれば未来進行形もある、、、ストレートな表現もあれば隠喩的なものもある。「日常会話くらいはできるようになりたい」という声をよく聞きますが、日常会話ほど振れ幅が大きく難しいものはないと私は思っております。(その理由は別ブログに回します。)

では、「英語を話したければ、ただひたすら話せば良い」と生徒たちに言えば良いのかというと、それはアドバイスとして成立しないと思います。そこで、if-thenの法則を英会話力習得の1アイデアとしてご紹介させて下さい。 Psychology Today に分かりやすい説明がありましたので、リンクを貼っておきます。 https://www.psychologytoday.com/us/articles/201101/the-science-success-the-if-then-solution

ポピュラーな日本語対訳が分からないのですが、英語では if-then plan, if-then planning, if-then technique などと呼ばれます。体感的ではありますが、このメソッドは、運動をする、とか、痩せる、など健康関連の目標を例とする記事が多いですが、私は英会話力アップに役立つメソッドだと思っています。 【記事の概略】 if-then planningとは、誘惑に打ち勝ったり良い習慣を身に付けたりするのに役立つテクニックである。

例えば、「痩せたい」という新年の抱負にたいして「食べる量を減らし、運動量を増やす」と目標を定めても、具体性に欠ける。何を食べ、それをどう減らすのか、そしてどのような運動をどんな頻度で、のように詳細なプランが必要である。 そこで登場するのが、

”If X happens, then I will do Y.” Xが起きた時、私はYをする。/ Xの時、私はYをする。

Xは時間や場所で、Yはあなたが起こす具体的なアクション。

例えば、食べる量を減らす、という目標に対しては 「デザートメニューが出された時、私はそれを無視しコーヒーを注文する。」というif-thenを作る。

また、運動量を増やす、という目標にたいしては、「月水金は仕事の後ジムで1時間運動をする」といった具合。

ある研究によると、if-thenプランに従って運動をした人は91%成功したのに対し、プランを立てなかった人の成功率は39%。

最初にこのアイデアを提唱した、ニューヨーク大学の心理学者 Peter Gollwitzer氏は、94の研究結果から、このテクニックは様々なゴールに対して機能すると結論付けた。そのゴールとは、「もっと公共交通手段を使う」といったものから、「ステレオタイプや偏見のある考えを持たないようにする」、といったものにまで及ぶ。 ゴールに向かってとるべき行為のために、具体性のあるwhen, whereを決定するという事は、脳内で(きっかけとなる)状況(=situation)、すなわちif、と、それに付随して起こすべき行動(then)をリンクさせることができる。それが繰り返される事で、thenの部分(すなわち、とるべきアクション)は無意識のもと自動に実行されるようになっていく。

【it-then planningの応用】

if-then を使って、生徒さんに課題を出すことがあります。例えば、 ・電車に乗った時、目の前に座っている人を英文で描写する。

この、1つのif-thenだけでも相当な練習量になります。例えば、「前に座っているおじさんはうたた寝をしている。」「目の前の女性は携帯を見ていて、時々眉間にしわを寄せている」。 「うたた寝をする」「眉間にしわを寄せる」など、言えそうで言えない表現は日常生活に散りばめられています。

生徒さんのレベルや性格によってtweak(微調整)が必要になりますが、最初は、その時点の英語力だけで作れる文のみに取り組むのでもOKだと思います。ただ、それでは語彙力が増えませんので、そこで、第一段階のif-thenに慣れてきた頃合いをみて、「表現できない日本語が頭に浮かんだら、それをスマホにメモしてもらう」という第二段階に移ります。メモするだけでOK。とりあえずは、メモをするという習慣を身に付けてもらいます。第三段階では、「夕飯が終わったら(if)、スマホに書いた、それらのメモを英文に起こす(then)」という if-then planを作ります。

そこまで先生や講師が手取り足取りする必要があるのか?と思う方もいらっしゃうかもしれませんが、私は、生徒さんの多くは、英語の学習の仕方自体が分かっていない事が多く、よって方向性を全く持ち合わせていないと感じます。そこを助けてあげるのも、指導者としては大切な役割だと思います。step by stepの if-then planningで、雲をつかむような英語習得までのプロセスに、道筋がみえてきます。if-thenにtweakを加え続けて長期にわたって勉強してもらうことが、英語力を相対的に上げることに欠かせません。

このブログが、先生方の日々のご指導のアイデアとして、役立つことを願っております。

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